大嵜直人のブログ

文筆家・心理カウンセラー。死別や失恋、挫折といった喪失感から、つながりと安心感を取り戻すお手伝いをしております。

雪下出麦、寒さ厳しければこそ。

ここ数年、暖冬が続いていたが、この冬は少し様相が違うようだ。

年末寒波がやってきて、久々に「痛い」寒さを味わっている。
しばらく使っていなかった手袋も、衣装ケースから引っ張り出してきた。

来週末には、再び寒波がやってくるようで、予想最低気温はマイナス5度という、あまり見慣れない数字が出ていた。

寒いのは苦手なのだが、さりとて、朝の玄関のドアを開けた瞬間の「きゅっ」と身が引き締まる凛とした感じは、冬ならではのものだ。

季節がめぐるというのは、いろんな感情を私たちに味わうことを与えてくれる。

冬至も、すでに末候。
七十二候では、「雪下出麦、ゆきくだりてむぎのびる」の時候だ。

麦というのは面白いもので、気温が下がっていく秋に種まきをする。
冬を経て成長し、収穫の時期は初夏のころ。
「麦秋」は梅雨の前の乾燥した時期の季語なのだから、面白い。

雪が降り積もっても、その下で背を伸ばす麦。
どんな季節にも、命の芽吹きはあり、その反対に枯れゆくものもある。

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いつもの川沿いに、白い蕾が。
木蓮の花だろうか。

この厳しい寒さの中でも、春に向かって歩みをやめないものもある。

いや、冬だからこそ。
膨らむ蕾も、伸びる芽もあるのかもしれない。

耐雪梅花麗(雪に耐えて梅花麗し)。
かの西郷隆盛が甥に向けて贈った漢詩の中の一文を、思い出す。
引退した広島東洋カープの黒田博樹さんが、座右の銘にしていたことで私も知った言葉だ。

降り積もった雪に耐えてこそ、麗しい梅の花は咲く。
寒さ厳しい冬なれど、その寒さを愛で、季節の移り変わりを見つめていきたいと思う。

細部を見つめることは、大いなる癒しを与えてくれるのだから。

季節のめぐりは、いつも私にたいせつなことを教えてくれる。

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冬らしい空。年が明けると、それも「新春」という感じがするもの、不思議だ。
見たいように、世界を見ている。