そこに、いる。
いつもの川沿い、いつもの夜。
いつもの空に、いつもの月。
そこに、いるのだ。
遠目からは、黄色い傘を広げたようにも見える。
周りの風景から、そこだけ浮き上がるかのような、その一角。
ぼんやりと、どこか霧の中に浮かんでいるようにも見える。
キダチチョウセンアサガオ。
天使のトランペット。
近づけば、より一層まわりとのアンマッチが際立つ。
不思議な形をしている。
なぜ、このような形になったのだろう。
人は、いつも理由ばかりを考える。
何かにつけて、人は理由をつけたがるけれど。
「なぜか」というよりも、いまそうであることが、すべてのようで。
それは、どこか合わせ鏡をのぞき込んでいるようでもある。
傘の下に入り、灯りを見上げる。
南国のフルーツのような、甘い香りが、わたしを包んでいた。
どこか、まわりから浮き上がっているような、霧の中に浮かんでいるような気がした。
それは、外から見る風景と、同じなのかもしれなかった。
今日も、そこにいる。
キダチチョウセンアサガオ。
今日も、そこにいた。
そこに、いてくれた。