大嵜直人のブログ

文筆家・心理カウンセラー。死別や失恋、挫折といった喪失感から、つながりと安心感を取り戻すお手伝いをしております。

秋、深まるという表現。

夏の終わりとともに透明度を得た空は、いつしかその青さに深みを増していく。

見上げれば、はっと声を上げそうになる青さ。

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そんな日の空は、湖底を見渡しているような錯覚に陥る。

プラスチック樹脂で透明な製品をつくるためには、ごく少量の青色の着色剤を加えると、その透明度が増すと聞く。

ブルーイングという着色手法だ。

青と透明は、似ている。

そう納得できる、秋の空。

季節の中で、秋だけが「深まる」と表現する。

春は待ちわびるものであり、
夏は過ぎゆくものであり、
冬は訪れるものだ。

秋だけが、「深まる」。

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「深まる」という表現の、美しさ。

透明度が深まると、青さに深みが増すように。

灼熱の夏の空気が澄んでいくにつれて、秋は深まっていく。

時に「菊花開、きくのはなひらく」。

秋の花も、咲き誇るころ。

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咲いていた花は、いつしか実りの秋の準備へと。

そこかしこで、秋は深まり、冬に向けての準備が進む。

生きものが死に絶える、冬。

その前だからこそ、生は深まり、また美しく。

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見上げれば、雲一つなく。

この色は、何色と表現すればいいのだろう。

秋の、色。

どこまでも、深く。