大嵜 直人のブログ

別れによって傷ついたココロは、出会いで癒される。私が辿ったそんな物語を「書く」ことをライフワークにしています。

最後のピースは、最後方からの豪脚とともに。 ~2020年スプリンターズステークス 回顧

ビアンフェが、嫌がっていた。

 

鞍上の藤岡佑介騎手が促すも、ピタリと動かない。

 

もし、有観客での開催だったら、スタンドは大きくどよめいていたのだろうか。

 

もう20年以上も昔、天皇賞・秋で枠入りを嫌がっていたセイウンスカイの姿を思い出した。

 

あのレースは、前走惨敗しており、中間の調教も冴えなかった武豊騎手のスペシャルウィークが、豪快に差し切る逆襲の走りを見せてくれた。

 

ぼんやりとそんなことを考えているうちに、ビアンフェはようやくゲートに収まった。

 

残りの各馬も、順調に枠入りが進む。

 

秋のGⅠシーズンの開幕を告げる、スプリンターズステークス

 

僅か70秒足らず、瞬き厳禁の電撃戦

 

そのスタートに、視線が集中する。

 

 

抑圧から解き放たれた16頭の中から、先手を主張したのは松若風馬騎手のモズスーパーフレア

 

昨年2着の雪辱を晴らさんと、その快速を飛ばす。

 

しかしビアンフェが絡んでいき、2頭が競り合う形でレースを引っ張る。

 

自らの持ち味を活かすためには仕方ないとはいえ、息の入らないその展開は、どちらにとっても厳しい。

 

2番人気のダノンスマッシュと川田将雅騎手は、それを見る4番手あたりにつける。

 

1番人気、グランアレグリアは…最後方にいた。

 

春のマイル女王は、スプリント戦の激流に行き脚がついていないのか。

 

あまりにも、後ろ過ぎる。

 

鞍上のクリストフ・ルメール騎手の意志なのか、いや、そうは見えなかった。

 

 

モズスーパーフレアとビアンフェがやり合って、前半の3ハロンは33秒を切ってきた。

 

開催最終週の中山の馬場を考えると、驚異的な超ハイペースと言っていい。

 

そのまま4コーナーを回り、直線を向く。

 

グランアレグリアは、まだ後ろから2頭目だ。

 

前の2頭はさすがに力尽き、ダノンスマッシュが抜け出そうとする。

 

残り200m、大外から暴風が吹いた。

 

グランアレグリア

 

14頭を撫で斬りにして、残り100m付近ですでに大勢は決していた。

 

豪脚、圧勝。

 

上がり3F、33秒6。

 

スプリント戦では、なかなかお目にかかれない最後方からの追い込み一気。

 

前が激流となる展開が向いたことも事実だが、絶対的な能力がなければできない芸当だ。

 

短距離での追い込みといえば、同じスプリンターズステークスデュランダルや、根岸ステークスブロードアピールが想起されるが、グランアレグリアのそれは、また異なる印象を受ける。

 

それは鮮やかさの中に、どこか戦慄を孕んだ豪脚だった。

 

 

これでグランアレグリアは、アーモンドアイを破った安田記念に続いて連勝となった。

 

桜花賞を含めて、通算3勝目のGⅠタイトル獲得となる。

 

調教師の藤沢和雄師とルメール騎手は、前年のタワーオブロンドンに続く連覇。

 

名伯楽と名手による共演、その次走を楽しみにしたい。

 

また、グランアレグリアの父・ディープインパクトにとっては、その産駒による初めてのスプリントGⅠ制覇となった。

 

これまでディープの産駒は、1,200mのGⅠを未勝利だった。

 

しかしその最後のピースも、グランアレグリアによる最後方からの豪脚によって埋められた。

 

 

2着にはダノンスマッシュと川田将雅騎手。

 

あの激流の中を先行しながら、誰の目にも強い競馬をした。

 

ただ、1頭だけ前にいた。

 

そんな感がある。

 

前走・セントウルステークスを勝っていた三浦皇成騎手から、川田騎手に手綱を戻した陣営だったが、「されど、天、味方せず」。

 

これまででも十分な戦績を残しているが、大きなタイトルを獲れるだろうか。

 

3着には、道中はグランアレグリアのさらに後ろ、シンガリを進んでいたアウィルアウェイと松山弘平騎手。

 

前傾ラップと読んだのか、好発から下げる、肚をくくった騎乗が奏功した。

 

松山騎手は2週間後に迫る大仕事、「3冠獲り」への期待が膨らむ騎乗だった。

 

 

さて、来週の第4回京都・東京・新潟開催から、観客を入れての開催となることがアナウンスされた。

 

まずは指定席のみでの入場となるそうだ。

 

その抽選を突破するのは、大きな馬券を当てるよりも難しそうだが、今年のコロナ禍の下で多くのスポーツイベントが中止になる中、よくぞここまで開催を止めることなく続けてくれたものだと思う。

 

それも、関係者の尽力あればこそ。

 

2020年のスプリンターズステークスが、グランアレグリアの豪脚とともに、無観客競馬の下で行われた最後のGⅠとして記憶されるよう、願っている。

 

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