大嵜 直人のブログ

別れによって傷ついたココロは、出会いで癒される。私が辿ったそんな物語を「書く」ことをライフワークにしています。

「私は無力である」ということの二義性について。

強い光が影を色濃くするように、ものごとには表と裏がある。

 

それは単純な二面性ではなく、「メビウスの輪」のような形を取る。

 

気付けば、もといた場所に戻ってくる。

 

 

たとえば、「私は無力である」という想いがある。

 

ときに、そんな想いに駆られることもあるだろう。

 

それは、否定すべき残念な言葉や思いだと見ることもできるが、それを出発点として捉えることもできる。

 

そして、前述の通り、出発点とは、最後に戻ってくる到達点のことでもある。

 

 

アメリカの比較神話学者であるジョーゼフ・キャンベル(1904ー1987)は、世界各地の神話や伝承には共通する物語の原型があることを指摘した。

 

彼はそれを「英雄の旅(または、英雄と輪廻:Heroes and the Monomyth)」と呼び、類型化した。

 

平穏に暮らしていたある日、彼は天命に気付き、冒険の旅に出る。

そこでさまざまな試練を経るとともに、かけがえのない仲間や師に会い、そしてついに最大の困難を克服する。

そこで宝物を手に入れ、故郷に帰還して王国を築く。やがて、また新たな天命に気付き、また旅に出る。

 

「英雄の旅」とは、人間が成長してく一つのロールモデルを示している。

 

それはジョージ・ルーカスが映画「スター・ウォーズ」の脚本の参考にしたと伝えられ、TVゲームの「ドラゴンクエスト」にもその類型を見ることができる。

 

この「英雄の旅」で重要なのは、最後が「故郷へ帰る:Return home」になっていることであると思われる。

 

さまざまな冒険や試練を経験し、財宝を手にした英雄は、最後には「もとの故郷」に帰ることを、キャンベルは示している。

 

青い鳥を探しに外の世界に出たチルチルとミチルが、もとの家に帰ってくるように。

 

結局のところ、もともといた地点こそが、到達点になることを示す類話は多い。

 

それは、螺旋階段のような形状なのかもしれない。

 

 

話を「無力であること」に戻す。

 

無力であると感じる出発点は、自分の力の非力さ、あるいは足りなさを痛感する事なのだろう。

 

助けたかったのに、助けられなかった。

力になりたかったのに、力になれなかった。

与えたかったのに、与えられなかった。

 

そうした想いがあるからこそ、自らが「無力である」と感じてしまう。

 

けれど、それはある意味で病的なまでに忘れているだけの状態ともとれる。

 

自分は「無力である」と嘆く人ほど、

どれだけの人を、助けてきたのだろう。

どれだけ周りの力になっていたのだろう。

どれだけたくさんの愛を与えてきたのだろう。

 

それを忘れて、受け取っていない可能性が、大いにある。

 

先ほど、私はスマートフォンで電話をかけながら、メールが見たくなってそのスマートフォンを探して見つからず「紛失したかも…!」と焦っていたのだが、そのレベルの健忘症だ。

 

あるのに、見えていない。

 

 

そこが、出発点だとしたら。

 

その人が、「英雄の旅」のように天命に駆られて旅に出て、師に出会い、困難を克服して霊薬を得て、故郷に帰ってきたとしたら。

 

そこでは、故郷の風景はどのように変わっているのだろう。

 

偉大な師に出会い、かけがえのない仲間を得て、強大な悪魔を倒して、金銀財宝を得たとしても、その英雄はやはり「私は無力である」という想いを抱く。

 

その意味は、旅に出る前とは異なっている。

 

 

自らの力の偉大さを受け入れた上で、なお「私は無力である」、という想いを抱くとき。

 

それは、自らの矮小さから「私は無力である」と感じるときとは、また異なった形を取る。

 

私には、与えられた力がある。

けれど同時に、私は無力である、と。

 

その意味で無力であることを受け入れたときに、人は初めて「できることしか、できない」という真実を知る。

 

それこそが、英雄が旅で得た霊薬なのかもしれない。

 

その霊薬を手にすると、初めて「自分のできることを精一杯やり、あとは誰かを頼りお願いすること」ができるようになる。

 

それは、英雄が旅に出る前の「誰かを頼る」という意味とは、また違った意味を持つ。

 

自己卑下でも、癒着でも、依存でもない。

 

自立した個としての、無力さ。

 

始まりと終わりは、同じ場所に還ってくる。

 

「英雄の旅」と同じように。

 

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