大嵜 直人のブログ

別れによって傷ついたココロは、出会いで癒される。私が辿ったそんな物語を「書く」ことをライフワークにしています。

美しき菊・盾・盾。 ~2020年天皇賞・春 回顧

新緑の色を詰め込んだような風が薫る、五月。

 

ようやく寒さを気にかけることも少なくなり、そして日中の陽射しに夏の太陽の薫りを感じ始める、一年で最も心地の良い気候の時期。

 

伝統の春の天皇賞は、そんな時期の淀で行われる。

 

かつて、ジャガーメイルが勝った天皇賞を現地で観戦したことがあったが。

 

今年と同じようにゴールデンウィークの真っ只中で行われたこともあり、帰りの高速道路で大渋滞に嵌ってしまったことを思いだす。

 

淀の駐車場を出てからの一般道で往生し、ようやく京都南インターに乗ったと思ったら、ピクリとも動かない。

 

いつもどおりスッカラカンのオケラ街道の帰り道、同行した友人と辟易しながら帰ったのだが、無観客競馬が続くいまのご時世を考えると、それも贅沢極まりないものだったと思う。

 

それでも、無観客とはいえ、伝統の春の盾が、今年も実施されることに感謝したい。

 

 

GⅠには、GⅠの「格」があると思っている。

 

GⅡやGⅢで連勝を重ねて、GⅠで人気になって惨敗、というケースをたくさんいるが、それはやはり「格」が足りない、ということの証左のように思う。

 

もちろん、時にGⅠでも、あっと驚くような大番狂わせが起こるが、そういったときの勝ち馬は、後から見れば過小評価であった場合か、もしくは「格」を越すよう程の有利な要素(枠、展開、馬場、コース適性、血統、あるいは騎手の好騎乗、厩舎の仕上げなど)が働いたときだ。

 

だからこそ、頂上決戦であるGⅠは面白い。

 

この馬には、勝者となる「格」はあるのか。

 

それとも、「格」を越える要素が、存在するのか。

 

その問いかけは、GⅠレースの醍醐味とも言える。

 

 

火災に見舞われた故郷に春を告げたエリモジョージ

貴公子・テンポイントの初戴冠。

イナリワンから始まる武豊騎手、春の盾4連覇。

トウカイテイオーを歯牙にもかけなかったメジロマックイーン

淀に咲き、淀に散った黒きステイヤーライスシャワー

復活を期す五冠馬を豪快に差し切ったサクラローレル

そのローレルを差し切ったマヤノトップガン、最後の鬼脚。

スペシャルウィーク、強いダービー馬の帰還。

テイエムオペラオーの覚醒。

キタサンブラック、衝撃の世界レコード。

 

私個人としては大好きな長距離レースだが、スピード重視の世界的なトレンドから、その地盤沈下が叫ばれて久しい。

 

ドバイや香港の盛況、大阪杯のGⅠ格上げなど、春の盾を取り巻く環境は年々厳しくなる一方である。

 

それでも、これだけの名勝負数え唄を重ねてきた春の盾には、やはり絵になるスターに勝ってほしいと願ってしまうのである。

 

ここまで書けば明らかなように、今回勝つのは1番人気を背負ったフィエールマンとルメール騎手しかあるまい、と早い段階で考えていた。

 

菊花賞馬であり、前年の天皇賞・春を勝っている現役屈指のステイヤー

 

前年の有馬記念以来のレースは、最近のトレンドの「1戦必勝」という最近のローテーションのトレンドであるし、枠順が大外枠になっても、問題ないだろう。

 

このメンバー、やはりGⅠ・2勝馬は「格」が違うはずだ。

 

 

淀の無人のスタンドにファンファーレが鳴り響く。

 

この淀のスタンドも秋から改装工事が入るため、GⅠのファンファーレが流れるのは、最後である。

 

それを考えると、無観客競馬がやはり寂しい。

 

ゲートが開く。

 

芦毛のメイショウテンゲンとトーセンカンビーナが一完歩程出遅れたが、それ以外は揃ったスタート。

 

前走の阪神大賞典で大きく出遅れたキセキは、無事にスタートを切ったようだ。

 

このあたり、当たりの柔らかい武豊騎手の手綱の恩恵か。

 

ダンビュライトとスティッフェリオが前をうかがう。

 

キセキも行き脚よく、その後ろで構える。

 

徐々に隊列が決まっていく。

 

フィエールマンは。

 

後ろから4頭目あたり。

 

父譲りの切れ味で勝負するタイプだけに、位置取りよりも折り合い重視なのだろうか。

 

4コーナーを回り、1周目のスタンド前へ。

 

フィエールマンは少し押し上げて、中団のやや後方、外目を走っている。

 

外目を走っていたキセキが、上がっていったことをアナウンサーが告げる。

 

画面が切り替わると、ダンビュライトを交わしてハナに立っていた。

 

行ってしまったのか、行かせたのか。

 

向こう正面、残り1,000mのあたりでミッキースワローが押し上げていく。

 

その後ろのメイショウテンゲン、トーセンカンビーナもそれについて行く。

 

フィエールマンはまだ動かない。

 

2度目の坂を登る。

 

キセキがまだ引っ張っている。

 

残り600、各馬の手綱が激しく動き、ラストスパートに入る。

 

直線を向く。

 

フィエールマンは外に持ち出した。

 

ユーキャンスマイルは内。

 

先週落馬負傷した岩田康誠騎手からバトンを受けた浜中騎手は、その岩田騎手を彷彿とさせるイン突きで勝負に出る。

 

キセキをスティッフェリオが交わす。

 

北村友一騎手の右ムチ、伸びるスティッフェリオ。

 

外からミッキースワロー、そのさらに外からフィエールマン。

 

フィエールマンが伸びる。

 

しかし、スティッフェリオがさらに伸びる。

 

11番人気の金星か

 

最後の50メートル、馬体が並ぶ。

 

首の上げ下げで、ゴール板を通過した。

 

外が差し切ったようにも見えたが、判別のつかない微差の決着。

 

ほどなくして、掲示板の一番上に「14」の数字が灯る。

 

フィエールマン、第161回天皇賞・春を制す。

 

これで3歳時の菊花賞、4歳時の天皇賞・春に加えて、5歳でも天皇賞・春を制覇。

 

美しき、菊・盾・盾という三つのタイトル。

 

それにしても、長距離のGⅠを3勝するフィエールマンを輩出するディープインパクトの懐の深さには、恐れ入るばかりだ。

 

あらためて、昨年の夭逝が惜しまれる。

 

ハナ差の2着に大健闘のスティッフェリオ、3着にロングスパートが奏功したミッキースワロー。

 

令和最初の春の盾は、フィエールマンが「格」を見せてくれた。

 

今年秋からのスタンド改修で、しばらく淀での天皇賞・春の開催は休止となるが、その最後の盾に華を添える勝利だった。

 

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