大嵜 直人のブログ

別れによって傷ついたココロは、出会いで癒される。私が辿ったそんな物語を「書く」ことをライフワークにしています。

もしかしたら、クッパはマリオに「負けてあげていた」のかもしれない。

息子とマリオに遊んでもらう時間が増えた。

 

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子どもの吸収力というのはすごいもので、あっという間に上手くなっていく。

 

それでも、「クッパ城」のステージは苦手なようだが、クッパまでの道中のプレイを私にやらせて、クッパを倒すところだけは自分でやる!という遊び方をしている。

 

ファイアマリオのままでクッパのところに行って!」などと、注文も手厳しい。

 

うっかりミスをすると、怒られる。

 

クッパを倒すには、ファイアマリオが使える武器の「ファイア」を数発当てるか、クッパの後ろにある斧で橋を壊して、その下に流れる溶岩の海に落とすかのいずれかだ。

 

最近の息子は、ファイアでクッパを倒すのがお気に入りのようだ。

 

 

何度目かのクッパを倒した後、息子は不思議な疑問を呈する。

 

クッパ城って、だれがつくったのかな?」

 

さすが、マンションをつくったり4LDKをつくったりする、小さな施工主は、視点が違う。

 

小さい頃の私は、そんなことを気にしたこともなかった。

 

「さあ、だれだろう?でも、クッパ城っていうくらいだから、クッパ自身がつくったんじゃないかな」

 

怪訝そうな顔をする施工主。

 

「ふーん。じゃあ、クッパ城の溶岩って、どうやってはこんできたんだろう?」

 

溶岩の運び方だって?

 

たしかに、クッパ城には赤くグツグツと煮えたぎる溶岩が、大量に流れている。

 

火山が噴火して流れてくる、マグマのようなどろどろした溶岩の映像を、私は思い浮かべた。

 

「溶岩の運び方かぁ…おとうも知らないなぁ…運べるのかな、あんなもの。そんなことができるノウハウを持っているとすると、大手ゼネコンか、あるいはそれに関連する物流会社か…そこらへんしか、思い浮かばないや」

 

その答えに満足したのかしていないのか、「ふーん」と言って、息子はまたクッパ討伐に出かける。

 

またクッパを倒した効果音が流れる。

 

「でもさ、なんでクッパは、わざわざ溶岩をたくさんもちこんで、橋をこわす斧まで置いて、自分がマリオにたおされやすくしてるんだろう?」

 

言われてみれば、その通りだ。

 

なぜ、クッパはわざわざマリオに負けやすい環境を自ら整えているのだろう。

 

私は答えに窮した。

 

 

人は自立していく中で、比較と競争という罠に陥ることがある。

 

多くは親の愛を得るために、きょうだいや親戚、あるいは異性の親との間で、比較と競争をはじめる。

 

そして、テストの点数、偏差値やスポーツの記録といった、比較しやすい数字が身近に出てくる学校教育が始まると、それはさらに強化される。

 

これは自立のプロセスの一つで、「あいつには負けない」、「勝たなくてはならない」、「自分の力で何とかする」という観念のもと、人は自力でもがき、努力し、そして成長していく。

 

そういった面では、自立というのは誰しもが通るプロセスであり、それ自体が良い・悪いというものでもない。

 

けれども、自立が行き過ぎてしまうと、私たちを苦しめる。

 

誰にも頼れない孤独感、周りの人への嫉妬、気付けば競争してしまう、つかの間の優越感とそのキックバックのような劣等感、勝っても勝っても得られない自信、行き着く先は燃え尽き症候群

 

大盛りの海鮮丼の具のような問題たちを、いくつも抱えることになる。

 

当然ながら、その状態で「幸せ」や「充実感」を感じることは難しい。

 

比較と競争の罠と呼ばれる、自立のプロセスにおける典型的な落とし穴である。

 

 

その罠を回避するための、一つの方法がある。

 

「負けを認める」ということである。

 

それはすなわち、自立を手放し、比較と競争のスパイラルから降りる、ということでもある。

 

負けを認め、

白旗を上げ、

自分の無力さを受け入れ、

助けを求める。

 

行き過ぎた自立を癒すことができるのは、そんなプロセスだ。

 

いままで一人で頑張って、周りと競争してきた人にとっては、それは清水の舞台から飛び降りるくらい怖いことかもしれない。

 

それでも、自立が行き過ぎると、いつかはそれをせざるを得ない状況がやってくる。

 

それは、「絶対にイヤ」と思っていたそれらのことは、それまで感じられなかった「幸せ」や「安心」、「充実感」への扉を開く鍵となる。

 

 

もしかしたら。

 

クッパは、マリオに「負けてあげていた」のかもしれない。

 

マリオが勝ちやすいように、わざわざ舞台を整えて。

 

負けてやれ。

花を持たせてやれ。

 

自立を、手放して。

 

勝たせてやれ、と。

 

 

そんなせんないことが、頭をよぎった私は、息子の質問にどう答えようか、迷った。

 

「なんでだろうなー。もっと難しくすればいいのになー」

 

息子は、またクッパ城に乗り込みながらつぶやく。

 

クッパが、負けてあげることができる、カッコいい大人だからかもしれないな」

 

私は、ぼんやりと答えた。

 

「ふーん」

 

息子は気に留めた様子もない。

 

ミスした効果音。

 

「やっぱりむずかしい!おとう、クッパのところまでやって!」

 

息子はゲーム機を渡してきた。

 

また負けてくれるであろうクッパのもとに、私のマリオは走っていく。

 

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