大嵜 直人のブログ

別れによって傷ついたココロは、出会いで癒される。私が辿ったそんな物語を「書く」ことをライフワークにしています。

サンタってなんで夜行性なんですかね、と彼女は言った。

「いやー、外回りしてきたけど、街じゅうクリスマスの装飾でいっぱいだな」

 

「へえ」

 

「なんだ、その関心がない反応は」

 

「いや、実際関心がないです」

 

「へぇ…そうなのか。アレか、クリスマスだけキリスト教徒になって、一週間後には敬虔な神道になるのが許せないとかか?」

 

「いや、そういう意見もアンチ・クリスマスだから、関心があるには違いがないじゃないですか。巨人ファンとアンチ巨人と同じで。野球に興味がない人は、どちらでもないわけで」

 

「ふーん、そういうもんかね」

 

「そうですよ。アタシたちの世代って、上の世代に比べてクリスマスクリスマス言わない気がします」

 

「言われてみると、そうかもなぁ…俺たちの世代は、ものごころついた頃には広告代理店がクリスマスを煽りまくってた残り香があったもんな。時にバブル全盛期、みんな恋人へのプレゼントのためにクリスマス預金して、クリスマスのレストランやシティホテルの予約は1年前が当たり前、みたいな」

 

「うわ、えげつな…1年後の予約とか、ガチで無理です、アタシ。でも、ネットとSNSが情報をフラットにしたから、そういう人工的なブームって薄れていくような気がしますけどね。渋谷のハロウィンとかは自然発生的、みたいな」

 

「たしかに、年々、クリスマスって雰囲気は薄れていってる気がするなぁ」

 

「そう思います。特段イタリアンやフレンチを食べに行こうとも思わないですし、いつも通り松屋でいいです」

 

「いつも通り、牛丼…」

 

「いや、ちがいます。カレーです。くれぐれも間違えないようにしてください。失礼ですから。松屋の真骨頂は、カレーです。あのカレーと、妙に濃い味噌汁のコンボです」

 

「お、おぅ…」

 

「ま、でもコンビニのケーキが充実するのとかは、いいことですけどね」

 

「あぁ、たしかに。コンビニのケーキ、普通に美味いしな」

 

「ええ、とっても。特に生クリームのレベルが年々上がってますよね」

 

「ああ…そう言われると、食べたくなってくるな…」

 

「変に我慢して小出しにするより、欲望には素直に降参するべきです」

 

「あぁ…その通りだと思うわ…それは別にしても、サンタクロースの物語ってのは、よくできてるように思うけどなぁ。イブの夜に、赤と白のあの服を着たおじいさんが、トナカイの引くソリに乗ってプレゼントを配るって、なんか夢があるよな」

 

「子どもはそういうの好きですよね」

 

「なんでだろうな。気分が浮かれるというか。分かりやすいのかな」

 

「たしかに、赤・白・緑の配色も目に付きやすいですしね」

 

「それもあるけど、やっぱりお髭を生やした人の好さそうなおじいさんが、ソリに乗ってイブの夜空を駆ける…あなたの家にも、プレゼントがたくさん入った袋を背負って、やってくるかもしれない…子どもにも、大人にも、夢がある物語だよ」

 

「でも、冷静に考えると、何でそんなに大量のプレゼントを持ってるんですかね。どこから仕入れてくるんだろう…そもそも、その仕入代金は、どこでマネタイズしてるのかな…」

 

「やめて、そういうの。夢を壊さないで」

 

「いえ、大事なところですよ。どんなに素晴らしいことでも、花火打ち上げて終わりじゃなくて継続的にやるなら、お金の話は大事です。『道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である』ですから」

 

「何だそのドヤ顔は…」

 

二宮尊徳さんの言葉ですよ。でも、よく考えてみると、サンタってなんで夜行性なんですかね」

 

「夜行性とか、天然記念物の生態のように言うのやめて」

 

「だってそうじゃないですか、わざわざ子どもたちが寝入った夜じゃなくて、明るい時間に来てくれれば、『ありがとう、サンタさん』ってお礼も伝えられて、みんなハッピーじゃないですか?」

 

「まあ、明るいうちに来ちゃうと、正体がバレちゃうから…」

 

「えぇ、なんかその回答は夢がないです。せっかくいい物語なんですから、もっとロマンのある理由はないんですか」

 

「そうだなぁ…じゃあ、こういうのはどうだ?サンタクロースって、やっぱり夢や希望を届けてくれるよな?」

 

「まあ、そうですね。アタシもいろいろ届けてほしいです」

 

「で、やっぱり夢や希望って、夜に見るものだからなんじゃないかな」

 

「は?アタシ、昼寝してても夢を見ることはありますよ」

 

「いや、そうじゃなくて…人が希望を持つときって、必ずしも明るい時期じゃないと思うんだよね。ほら、別に真昼間に灯りをつけようとは思わないし、必要じゃないでしょ?」

 

「まあ、そうですね」

 

「やっぱり人が夢や希望が必要なときって、暗闇の時期だったり、夜明け前だと思うんだよ、うん。それがあればこそ、日の出を待つこともできるし、闇の中でほのかな灯りを楽しむことができる。だから、サンタクロースは、夜にしか訪れないんだと思うよ」

 

「うわ、なんですか、その満足げなドヤ顔」

 

「うるさい、話を振っておいて突き放すな」

 

「ま、どっちでもいいです。アタシはやっぱりケーキがいいです。待ってます、サンタさん!」

 

「誰がサンタだよ」

 

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