大嵜 直人のブログ

別れによって傷ついたココロは、出会いで癒される。私が辿ったそんな物語を「書く」ことをライフワークにしています。

結局、誰もが幸せになっていく

送別会を開いてくれると言ってくれたのは、先週のことだった。

 

会、とは言っても、私とその方の二人だけなのだが。

 

事前には伝えておいたのだが、飲まない私が珍しいようで、しきりに「自分だけ飲んで申し訳ない」と言っていたが、その度に私は飲まなくても楽しいんですよ、と何度も説明した。

 

まあ私自身も禁酒する前は、お酒を飲まずに飲み会に参加して何が楽しいのか?と思っていたクチなので、それも致し方ないとは思うのだが。

 

飲まなくても、気の置けない人と食事をして話すのは、楽しい。

 

それを現役の酒呑みに伝えるのは、なかなか難しいようだ。

 

 

一軒目で焼酎のボトルを転がして、二軒目で洋酒に走って、三軒目で未練がましくビールを煽っていた頃からすると、ずいぶんと大人の飲み方をして、ゆっくりと食事を楽しんで、そのまま一軒目で別れた。

 

ちょうどいい距離だったので、腹ごなしに歩いて帰ることにした。

 

しばらく歩いて川沿いの道に当たったので、道なりに歩いていく。

 

千鳥足ではない帰り道を歩きながら、今日の会話を反芻する。

 

「3日前から、仕事をしていても、そのことが頭を離れません」

 

「そりゃ、そうでしょうね。予想もしていないことが起こると、誰でもそうですよ」

 

自分の足音と、時折通り過ぎる車の音が響く。

 

「私の何が悪かったんでしょうか」

 

「いえ、何にも悪くないですよ、人生のチャンスが来てるだけですよ」

 

橋の上から見上げると、下限の月が、私を眺めていた。

 

「相手がこうしてくれたら、私も変われるんですが」

 

「ええ、よくわかります」

 

4月も中旬だというのに、まだ夜風は冷たく冬物のコートを仕舞わなくてよかったと思う。

 

「ずっと仕事を頑張ってきたことが無駄だったように感じてしまいます」

 

「辛いですよね。それだけ、家族を愛していた、ということなんでしょうね」

 

西の夜空は透き通っていた。

 

「こんなことで悩まされるとは、思いませんでした」

 

「私、中日ドラゴンズが逆転負けしたら、バチクソに気分悪いですよ。でも中日よりも圧倒的にファンの多いであろうレアル・マドリードチャンピオンズリーグで敗退しても、何とも思わないんです。人って、たいせつなものでしか悩まないですよ。それだけ自分にとってたいせつだった、ってことなんでしょうね」

 

明日は、きっとよく晴れるだろう。

 

「やりたいことなんて、ないですよ」

 

「いまは、そうかもしれないですね」

 

ふと気づくと、見慣れない道を歩いていることに気づいた。

 

酔ってもいないのに、自宅近くで道に迷うとは。

 

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頭の上には、まだ桜が咲いていた。

 

3月下旬から、もう1か月近くも咲いていることになるが、こんな年は記憶にない。

 

いや、それとも単に覚えていないだけなのか。

 

「お酒を飲みながら、人と話すのが好きなんです」

 

「ええ、それに私も救われています。距離が離れてしまったとかで、ご無沙汰になってしまった大切な友人とか、いらっしゃいませんか」

 

いつも通る桜並木のぼんぼりの灯りが、遠くに見えた。

 

「その2年近く会っていない東京の友人がいます。仮想通貨でだいぶ儲けたそうなんですが、いま何やっているのか、顔を見てきます。ワクワクします」

 

「すばらしい。今度、仮想通貨の儲け方を教えてください笑」

 

 

ふと我に返ると、あれは誰に話していたのかと、私は訝しんだ。

 

誰かに伝えたいことは、自分に言いたいこと。

 

何となく見覚えのある風景に出たので、私はそのまま歩き続けた。

 

スマホの地図アプリを見なくても、本能というのは分かっているのだと感心する。

 

今夜の私のように、自宅のすぐ近くでも、迷う時は迷うのだ。

 

誰もが、幸せに向かうナビとセンサーを持っている。

 

そして結局、誰もが幸せになっていく。

 

時に、私たちはすれ違う。

 

この広い夜空の下で、轟々と流れる時の中で、たとえ一瞬でも同じ何かを共有し、同じ何かを共感できたとしたなら。

 

それこそ、一期一会の奇跡と言える。

 

けれど、その感動は、自分の中だけの幸福感として留めておけばいいのだろう。

 

相手がどう思ったかは、どこまでいっても永遠に分からないのだから。

 

どんな出会いも、別れも、ただ、在る。

 

そう思うと、最後に残るのは、

 

私もあなたも、結局みんな幸せになってしまうのだから。

 

その肌感覚だけのように思う。

 

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川の向こう岸のマンションに灯りが見える。

 

水面に映るその灯りは、美しかった。

 

あの灯の数だけ、家の温かさがあると思うと、なぜかオレンジ色の灯をずっと見ていたくなる。

 

学生時代に帰省するとき、夜の電車の窓から流れるオレンジ色の灯を飽きもせずに眺めていたことを想い出す。

 

あのとき眺めていた灯りの下の温もりは、誰を癒していたのだろうか。

 

ぼんぼりの灯は、相変わらずまだ遠かった。

 

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