大嵜直人のブログ

文筆家・心理カウンセラー。死別や失恋、挫折といった喪失感から、つながりと安心感を取り戻すお手伝いをしております。

細部にこそ。

先週あたりから、陽の光の色が少し変わってきた気がする。

凛とした色から、少し輪郭のぼやけた色に。

路傍の広葉樹にも、午後のその柔らかな色の光が降りそそいでいた。

その陽の光は、ある一点を照らしているように見えた。

美しい新芽、芽吹き。

言葉を失う、その瞬間。

ただ見とれる、その刹那。

見ている私と、見られている世界の境界が溶けあうように。

それは、静かな静かな、そしてほんのわずかな時間。

そんな瞬間に、霊性は宿るのだ。

美しさと静寂は、細部の中にこそ見いだせる。

ほんの小さな小さな細部にこそ、もっとも偉大な神の息吹が宿る。

この未分化で混然としながらも、それでいて完全な世界。

この世界はすべて満ち足りている。

言葉はいつも遅れてくる。

緑、黄色、赤、オレンジ、青。

新芽、葉、茎、陽、葉脈。

言葉にしたとたんに、それは「切り分けられた」ものになる。

言葉に変えた瞬間に、それは「過去」になる。

言葉で伝えようとしたそのときに、それは「思考」になる。

未分化な混然とした世界と、切り分けられた整然とした世界。

言葉はいつも不完全で何か足りない。

その対比ともどかしさこそ、この世界を生きる理由でもある。

寂しさと欠乏感こそが、生きる理由であるように。

今日もこの世界は変わらず、すべて満ち足りている。

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