大嵜 直人のブログ

別れによって傷ついたココロは、出会いで癒される。私が辿ったそんな物語を「書く」ことをライフワークにしています。

言えなかった言葉と、癒えなかった傷

言えなかった言葉たちの裏には、

 

どうしても愛してほしかった自分がいる。

 

暗い部屋の中で膝を抱え、虚ろな目をしている私。

 

暗い闇の中で、差し出される手に悪態をつく私。

 

欲しいものが手に入らず、癇癪を起こして床をのたうち回る私。

 

彼らを封印して仮面を被れば被るほど、

 

「癒えなかった」傷は、いつしか「言えなかった」言葉になる。

 

 

感情的な人が苦手だった。

 

怒りも、喜びも、悲しみも、寂しさも、

ストレートに表現する人が苦手だった。

 

自分が感情を感じることに許可を出していないから、

感情豊かな人たちに嫌悪感を感じる。

 

どうしても言えない言葉があった。

 

「寂しいから、また会いたい」

 

それは、絶対に言ってはいけない言葉だった。

 

言ってしまったが最後、今生で会えないということを実感してしまうから。

 

絶対に口にしてはならない。

 

それは、

せっかくいままで海中深くに沈めた檻に閉じ込めた凶暴な「あの怪物」に、

わざわざ食糧と武器を与えて野に放つようなことだから。

 

放ったが最後、もう捕まえることは絶対に不可能だから。

 

わずかに残った仄かに暖かな私の魂を、

どんな無茶な酷使にも耐えてきたこの身体の臓腑を、

蹂躙され無残に食い尽くされる。

 

だから、その言葉を言ってはならない。

 

「あの怪物」を野に放ってはならない、絶対に。

  

孤独

 

という名の、その怪物を。

 

 

誰しもが、固く閉ざした心の奥底にその怪物を抱えている。

 

その怪物を解き放つ禁じられた呪詛は、人によって千差万別。

 

もうげんかいですがんばれません

おかねをもっとください

わたしだけをみてください

だめなわたしでもゆるしてほしい

なかなおりしよう、いままでごめんね

いままでありがとう、さよなら

 

自分の周りのざわざわする言動、

無性に腹が立つもの言い、

自分とは縁がないと思える言葉に、

 

その呪詛は隠れている。

 

その言葉を言ったときに、怪物を野に解き放ったときに、

湧いてくる感情が、ある。

 

助けてくれなかったら、どうしよう

嫌われたら、耐えられない

寂しくなるのは、もうイヤだ

誰からも相手にされなかったら、悲しい

私にはそんな価値なんか、ない

 

見るも恐ろしく、できれば関わりたくない怪物たち。

 

けれど、怪物だと思いこんでいたのは、

巣穴の中で「癒えなかった」傷を舐めて臆病にうずくまっている、

私の影だった。

 

「癒えなかった」傷がつくる影の私。

 

 

人は、本当のところ、その傷ついた私を無条件で愛したいと願っているのだ。

 

凍える真冬に暖房もつけず、

暗い部屋の片隅で膝を抱えて、

かちかちと奥歯を鳴らしている、

髪の毛もぼさぼさで、

風呂に入る気力もなく、

茫然と虚ろな目をした、

 

あのひどい私を愛したいと思っているのだ。

 

そんなあなたでも愛しているよ、と伝えたいのだ。

あなただけを愛しているのよ、と与えたいのだ。

そんなに頑張らなくてもいいのよ、と諭したいのだ。

あなたが背負っている罪を降ろしてもいいのよ、と許したいのだ。

ここにいるから寂しくなんかないのよ、と抱きしめたいのだ。

 

癇癪を起こして泣きわめいて、周りを一杯困らせても、

母の胸で気が済むまで泣じゃくって、抱きしめてほしいのだ。

 

いつの日だったか。

どこでだったか。

 

思い出すこともできないけれど、

人はきっとその真逆の経験を重ねて、

 

「癒えなかった」傷をつくる。

 

おそらくそれは、愛を学ぶために。

 

 

 その感情と対峙すると、人はまた愛されていた場所を思い出す。

 

ネガティブな感情を抱いたとき、

人の許せない言動を見たときは、

自分の中のどす黒い蠢く魔物に出会ったときは、

 

きっと大きなチャンスなのだ。

 

かくれんぼや缶蹴りに誘うように、その影の私の手を引こう。

 

私が一緒にいるから、大丈夫だよ 

何が怖いのかな?

寂しくなっても、私がいつもついているよ

あなたの素晴らしさを、私はずっと見ているよ

あなたは何をしていても愛されているのよ

 

歴史上の最も偉大な人物と邂逅するように、

その影の私に声をかけよう。

 

もしもあなたが夕闇の訪いを怖れるのなら、

私は足元を照らす明るい言葉の松明か灯篭になってあげよう

 

もしもその目に涙が溢れたら、

私が優しい言葉のハンカチになって拭ってあげよう

 

もしもあなたの上に心無い言葉のような冷たい雨が降ったなら、

あなたが濡れないように私は暖かい言葉の傘になろう

 

もしもあなたの前に渦巻く濁流が現れたのなら、

わたしは言葉の舟を浮かべてあなたを対岸に送ろう

 

もしもあなたが自分の価値を信じられないなら、

一晩でも二晩でもその素晴らしさを語ってあげよう

 

ぎこちなく気まずい儀式を乗り越えて、

影の私と一緒に遊ぼう。

 

光しか見ようとしなかった自分に、

その裏側にある影の私が本当に欲しかった言葉をかけてあげよう。

 

 

お父さんに立派になったって言ってほしくて、

お母さんに心配かけたくなくて、

お父さんに褒められたくて、

お母さんに怒られたくなくて、

お父さんが一人で寂しそうでいてほしくなくて、

お母さんが訳もなく不機嫌になってほしくなくて、

お父さんにがっかりさせたくなくて、

お母さんに笑顔でいてほしくて、

 

ずっと何もしてあげられなかった後悔ばかりで、

ずっと何も返せなかったという罪を背負って、

 

それでも、

 

それでも、

 

大好きだった。

 

大好きだった。

 

愛して、いた。

 

 

寂しさとは、人の生きる理由なのかもしれない。

 

「言えなかった」言葉を、

「癒えなかった」傷をずっとひとりで舐めているあの影の私に捧げよう。

 

光が差すところに、影ができる。

 

その影をつくっていたのは、

 

もしかしたら、

 

ずっと守ってきてくれた人たちの愛かもしれない。

 

角度を変えて見れば、その傷も愛の一部なのだ。

 

影の私と無邪気に遊んだ分だけ、世界はまた愛おしくなる。

 

影の私が童心にあふれた笑顔になった分だけ、世界はまた優しくなる。

 

影の私が悲しさにあふれた顔を見せた分だけ、世界はまた美しくなる。

 

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