大嵜直人のブログ

文筆家・心理カウンセラー。死別や失恋、挫折といった喪失感から、つながりと安心感を取り戻すお手伝いをしております。

根本裕幸さんの「札幌リトリートセミナー」に寄せて 〜ただそこにある愛を思い出す旅

先週末に、根本裕幸さんの「札幌リトリートセミナー」に参加してきましたので、今日はそのお話を。

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リトリート(Retreat)とは、退却や後退を示す英語で、転じて「隠居」や「隠れ家」、「避難」という意味でも使われる。

根本さんはこのリトリートセミナーを、「非日常に自分を置いて、日常を振り返り、本来の自分と再び出会う場」と定義づけている。

家庭や会社、地域社会、そこでの人間関係など自分を包んでいるいろんなしがらみから離れて、自分を見つめ直そうという趣旨の宿泊込みのセミナーである。

根本さんはこのリトリートセミナーをご自身のライフワークとして、全国各地で開催されている。

「リトリートに来ると、人生が変わる」と参加された多くの方が言う。

それは、一つの真実だと思う。

一つの出会い、あるいは一つの旅が、その後の人生のターニング・ポイントになることはよくある。

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振り返ってみると、あのときから何かが変わったと感じる出会いや旅。

根本さんのリトリートセミナーは、これまで多くの人のターニング・ポイントになってきたであろうし、そしてそれはこれからの続いていくのだろう。

私はといえば、今回の札幌が2回目の参加だった。
初めての参加は1年半前、湘南・葉山で開催された回だった。

当時、私はひどく重い問題を抱えていた。
人のココロの世界を学ぶようになり、全ての問題は自分自身がご丁寧に作っているという考え方を知ったことで、あれこれと自分を変えようとしてきた。

けれど、1年以上経っても現実は私の望んだようには変わらず、辟易としていた。

折しも、両親との突然の別離により抑え込んできた寂しさ・悲しさという「封印してきたパンドラの函」が開き切った頃で、日々ネガティブな感情に揺さぶられ、通勤の車中や会社のトイレで訳も分からず落涙していた。

そんな中参加した1年半前、逗子駅の改札を出たときの不安と怖れをよく覚えている。

来てみたのはいいけど、何が変わるんだろう。
見知らぬ土地で、見知らぬ人と、宿泊セミナーを受けるなんて、

人見知りの私にできるのだろうか。

怖い。来なければよかった。

それが、である。
今回、新千歳空港に着いたときには、楽しみしかなかった。

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あの根本さんの名人芸のセッションが見られる。
理加さんのクリスタルボウルが、生で聴ける。
岩橋さんの企画するオプショナルツアーは、神がかっている。
そして、前回お会いした懐かしい顔に、また会えるかもしれない。

あぁ、人生って変わるものだな、と思った。

実は、1年半前あれほど湘南で思い悩んでいた問題は、そのとき私が望んだ形で解決したわけではない。

けれども、問題が望んだ形で解決しなくても、人生を楽しむことはできるようになる。

それは、不思議な感覚だった。

私は、問題が解決しなければ、幸せになれないと思っていた。

今の自分よりも、頑張って素晴らしい自分にならないと、成功しないと思っていた。

けれども、実はそうでもなかった。

問題など気にしなければ問題ではないし、今の自分で完全で完璧だったのだ。

そんなことを思い出させてくれるのが、根本さんのリトリートセミナー。

その柱は、根本さんのセッション、根本さんの奥様の理加さんのクリスタルボウル、そして共催者である岩橋さんのオプショナルツアーから構成されている。

前置きが長くなったので、今日は根本さんのセッションについて綴ってみたい。

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根本さんのセッションとは、分かりやすく言えば「オープンカウンセリング」である。

参加者の中から自分の問題をシェアしてもいい人を募集して、その人をカウンセリングしていく。

こう書いてしまうと、「他人の悩みなんて、聞いたところで意味があるの?」と思われるかもしれない。

その答えは、「大いにある」だ。

私たちは成長していく中で、「自分ではない誰か」になろうとする。
少し乱暴にくくってしまえば、「愛されなかった」という傷ついた記憶から、何とか「愛される私」になろうとして、本来の自分から離れた自分を演じるようになってしまう。

そして、本来の自分から離れた分だけ、様々な問題を抱えるようになる。
仕事、恋愛、お金、家族、人間関係・・・いろんなバリエーションはあれど、それらの問題は本来の自分に戻るためのアラームとも言える。

相談者の抱える問題の話を深く掘り下げていくうちに、それを聴いている人は自分に置き換えたり、相談者の話に共感したりすることで、自分の抱える思考パターンに気づいていく。

それは、私たちが普段あまり意識していない深いレベルで、心に染みてくる。
感情が、揺さぶられる。

聴いているうちに、不思議な感覚に包まれる。

あれ?あの根本さんと話している相談者は、誰なんだ?

実は、あそこで問題をシェアしているのは、私なのかもしれない・・・と。

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そしてリトリートセミナーで根本さんは、「ロールプレイセッション」というセラピーを使う。

これは心の中の風景を、文字通り演劇(ロールプレイ)で目に見える形にするセラピー。

これが、えげつない。

過去の自分を否定していて自己嫌悪がある相談者のセッションの際には、素敵な雰囲気の人を選んでもらい、その人の魅力をたくさん見つけて伝えてもらっていた。

他人の中に見る魅力は、自らの魅力が外界に投影されたもの。

今まさに伝えたその魅力は実は全て自分の魅力でした、と宣言した上で、その人(=今までの自分)に向けて、

「いままでごめんね。」
「ずっと一緒にいてくれて、ありがとう。」
「〇〇ちゃん(自分の名前)、仲直りしよう。」

と呼びかけてもらったり、

あるいは、幼少期から弟にばかり母親の愛情が注がれてきたと感じていた相談者のセッションの際には、

母親役と弟役を選んで出てきてもらい、母親役の女性に

「お母さん、私はここにいるよ。」
「弟ばかりじゃなくて、私をちゃんと見て。」

と、ずっとずっと言えなかった本音を言ってみたり。

そうしたセラピーを観ているだけで、感情は激しく動き、心は深く揺さぶられる。
そのどれ一つとして他人事の話はなく、全て自分ごととして感情が揺れる。

こう書くとクサイのだが、これらのセラピーが感情を揺さぶるのは、そこにずっとあった「愛」に気づかせてくれるから。

今まで、自分に対して誰かが与えてきてくれた「愛」、
今まで、自分が誰かに対して与えてきた「愛」。

その誰しものココロの奥底に必ず潜む「愛」とつながることが、根本さんがリトリートセミナーに込めたテーマだと思う。

そこにつながることができれば、無敵になる。
そこにあったはずの問題は、問題として存在することができなくなる。

こんなにも自分は素晴らしく、また愛にあふれた存在だった。

そしてそう思えた分だけ、世界もまた美しく、そして優しくなる。

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そうしたココロの癒しとその外界への投影こそが、恐らく「リトリートに出ると人生が変わる」ということの本質なのだと思う。

 

さて、こう書くと結構深刻な感じのセッションに見えてしまうが、根本さんの軽快なトークによる相談者の方との掛け合いで、多くの時間は「笑い」に包まれている。

1、2時間ほどの短い時間で聴く人の「笑い」と「涙」を引き出すことのできる根本さんは、もう天才としかいいようがない。

「笑い」だけ、「涙」だけ、ならば映画やコメディでもできるのだが、その「両方」を引き出すことのできる人を、私は寡聞にして知らない。

そういう意味では、稀代のエンターテイナーとも言える。

限られた時間の中で、きっちりと「笑い」を取ったあとで、相談者のココロのパターンを見つけ、それを癒すセラピーにつなげる。

どうやったらそんなアドリブが効くのか、私には不思議で仕方がない。

それは恐らく、延べ15,000本以上ものカウンセリングをこなし、目の前の人をどうやったら笑顔にできるのだろう、ということをずっと考えてこられた根本さんだからこそできる芸当なのだと思う。

そんな根本さんのセッションを聴いていると、天才と呼ばれた偉人たちの技、たとえば、

桂枝雀師匠の代書、
菊池涼介選手のセカンド守備、
ゲイリー・カー氏のコントラバス、
武豊騎手の長距離戦のペース配分、
フェルメールの絵画の光の反射・・・

そんな煌めきのような偉人たちの技を想起させられる。

あぁ、また名人芸を聴けてよかった、と。

 

だいぶ勢いに任せて書いてしまったが、リトリートの前と後では、参加者の表情が違う。

リトリートの後は、みんなお風呂上がりのようなぽかぽかして「開いた」表情をしているのだ。

気持ちのいいお風呂や温泉から上がった後に悩みを抱えることが難しいように、リトリートセミナーに出た後は、具体的に何か相談して問題を解決したわけではないのに、「まあ、いっか。たぶん、大丈夫」と思えるようになる。

そして不思議なことにその感覚は、リトリートセミナーから戻って日常に返ってきてからも続いていくのだ。

思えば、このブログを書き始めたのも、根本さんとのご縁からだった。

私がここで書き続けるきっかけとなったブログ - 大嵜 直人のブログ

そんなご縁からつながったリトリートセミナーを、7月の札幌という素敵な土地で参加できた僥倖に、改めて深く感謝したい。

改めて今回のリトリートセミナーで関わることできたすべての方に、深く御礼申しあげます。ありがとうございました。

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