今日も書評を。
椎原崇さん著「うまくいったやり方から捨てなさい」サンマーク出版
人気コンサルタント・ブロガーの椎原崇さんの作家デビュー作。
椎原さんは中卒でパチプロ→飲食店オーナー→ビジネスオーナー→セミリタイヤ→コンサルタントというエッジの立った経歴の人気コンサルタント。
私は以前から椎原さんのメルマガに登録させて頂いているが、そのエッセンスを集めた一冊。
何よりも、読みやすい。
音読したくなるほど、平素な文章で書かれた椎原さんのコンサルタントのエッセンスは、どの章も深く首を頷かされる。
スタバでLサイズを頼もうとしたおじいちゃんの話。
ジムで初めてヘッドスパを受けた話。
週刊少年ジャンプを立ち読みする話。
野菜ソムリエのイチロー選手の話。
誰もが想像できる具体的な話から、人間の心理の「キモ」の部分を衝くのが抜群に上手い。
一つの名人芸のようで、読んでいて惚れ惚れするくらい。
気づけばあっという間に読み終えて、一気に2周目も読んでしまったくらい、読みやすい。
その中でも、私が最も目からウロコだったのが「アクセルとブレーキの法則」という章。
この法則は、以前に椎原さんのメルマガやブログでも書かれていたが、どこか腑に落ちない感じがしていた。
けれど本書の中で詳しく書いていてくださって、この章を読めただけでも買った価値があったと感じた。
Aにするのか、Bにするのか・・・
人が生きていく中で抱える「葛藤」。
本書の中では、既婚男性との不倫に悩む既婚女性が椎原さんにコンサルに来られたときのお話しが具体的な例として挙がっていた。
「夫と子どもと今のままの関係を続けていく」
「離婚して恋人と一緒になる」
その葛藤に悩むの女性の抱える問題は、実は「ダミー」だ、と椎原さんは書いている。
心の奥底を掘り下げていくと、そのいずれにも共通の目的が必ず見つかる、と。
そしてその目的の達成のために、片方のメリットが心のアクセルになり、もう一方のメリットが心のブレーキになってしまっているため、綱引きをしてしまい、なかなか動けずに消耗してしまう。
けれども「その目的は実は共通のものである」と気づくことができれば、無駄にエネルギーを使って消耗することなく、動き出すことができる。
そして、大切なのはどちらの目的も、実は100%の「愛」からアクセルとブレーキを踏んでいる、ということだと椎原さんは言う。
このあたり、カウンセリングで有効な問いかけの一つとされる「その状態にメリットがあるとしたら、何だろうか?」というものと似ている。
パートナーができないことのメリットは何だろう。
人見知りでいることのメリットは何だろう。
あの人を許せないことのメリットは何だろう。
いつも抱え込みすぎて周りの人に頼れないことのメリットは何だろう・・・
それらは、どれもが自分の中にある100%の「愛」から来ているのだ。
ただの一つの例外もなく。
全て大切な自分を守るために、愛するために、そうしてきたのだ。
他人から見れば、それは分かりやすいのかもしれない。
けれども、なかなか自分で自分のアクセルとブレーキを見つけるのは難しいものだ。
相当に内観ができる人でないと、自分で気づくことは本当に難しい。
だからこそ、友人であっても家族あってもコンサルタントであっても、第3者の意見を聞く、ということは大切なのだと思う。
中学卒業後、パチプロをされていたという椎原さんの本書を読んでいて、私もスロットにからんだエピソードを思い出した。
私も学生時代に、よくスロットやパチンコを打っていた。
もちろん私はプロなどではなく遊びでしかなかったが、当時やたらとスロットで勝っているRさんという先輩がいた。
正確な「目押し」(狙った位置にリールを止める技術)と、「立ち回り」(どの店のどの台を打つか?いくら投資して、いくら勝ったら/負けたらやめるのか)で、学生の身分で月100万くらいは稼いでいた。
余談だが麻雀も死ぬほど強くて、何度かお相手させて頂いたが全く歯が立たなかった。
私もよく一緒に打ちにいっては、勝った際のオゴリ酒の恩恵に預かっていたのだが、そんなRさんが「スロットやめる」と突然言い出した。
「はぁ???こんなに勝ってるのに、何でですか?」
私を含めた周り全員が聞いた。
「打たない日も日々データ集めに奔走して、閉店までパチンコ店に入り浸り。当たり台を引いたと思ったら、一日中機械のように作業。それが毎日。それで、やっとこさ月100万。それなら、もっと楽に月100万稼げるようになるための方法を探すわ」
そんなようなことを言って、理系だったRさんは研究室に入って、スロットを打たなくなった。
「もったいねぇ・・・」
私を含めた周りはそんな想いを抱いたが、本書を読んだ今なら分かる。
「もったいないもの」はまっ先に捨てなさい
椎原さんがそう書いているからだ。
卒業以来お会いしておらず連絡も取っていないので、新しいステージに移ったRさんが果たして今何をしているのか、知る由もない。
それでもきっとRさんは、あのとき「うまくいったやり方から捨てなさい」という声を聞いたのだろうと、今になって思う。
そんな学生時代の淡い想い出にも浸れて、とても清々しい読後感であった。
さて、少し時間を取って「いまの私のアクセルとブレーキは何だろうか」と考えてみることにしようと思う。