大嵜直人のブログ

文筆家・心理カウンセラー。死別や失恋、挫折といった喪失感から、つながりと安心感を取り戻すお手伝いをしております。

感想戦を黙らせる味 ~東京・「東新宿 炭火割烹 倉乃介 発酵と熟成の幸」 訪問記

先日、東京は東新宿の「炭火割烹  倉乃介」さんにお伺いしましたので、その訪問記を。

 「倉乃介」さんは、副都心線・大江戸線の東新宿駅から歩いて5~10分ほどの場所にあります。

新宿三丁目駅、もしくは新宿駅からだと徒歩15分くらいとのことですが、都心の地理に全く疎い私には、スマートフォンの乗り換え検索とGoogleマップだけが頼りです。

というよりも、行きは東急東横線から乗ったのですが、完全に同行した東京の友人頼りでした。

私が学生時代に下宿していたころの東横線は、「渋谷行」と「桜木町行」のシンプルなものだったのですが、もう今は相鉄線や都営メトロといった複数の路線が乗り入れして、行き先すらもよくわからなくなっていました。

おそるべし、東京。

副都心線の東新宿駅のホームから地上に出るまでも、驚きの長さのエスカレーターと階段で登ってようやく地上に出た後は、東に歩いていきます。

大通りから一本入ったら、新宿でもこんな住宅街が広がっていることにも驚きです。

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道すがらの雰囲気のよさそうな居酒屋、バーの誘惑に負けず、「倉乃介」さんを目指します。

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ほどなく、たどりつきました。

行燈の灯りが素敵な入口です。

店内に入ると、素敵な着物の女性がお迎えしてくれました。

そしてカウンターでは大将がいい笑顔をされています。

この方の料理は美味しそう・・・という雰囲気をすでに醸し出しておられました。

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テーブル席に案内されます。

この日の麻雀上りの野郎三人という色気のない面子にはもったいないくらい、素敵なお席。

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まずはビールから。

一日おつかれさまでした。

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枝豆は「茹で」か「焼き」かどちらにしますか?との問いかけに迷っていたところ、「それじゃ、半分ずつにしましょうか」とお気遣い頂きました。

茹で、焼き、どちらも風味が違って楽しい。

これからの料理を期待せずにはいられない一皿。

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お造りの盛り合わせ。

奥からマグロ、真鯛、アオリイカ、イワシ。

右手の貝は北寄貝とつぶ貝。

この「倉乃介」さん、店名にもあるとおり、素材を熟成させることで旨味を引き出すのが売りで、大将がわざわざ席までそれをご説明に来て頂きました。

熟成のお話しをする大将のお顔は本当に楽しそうで、まるで中学生の男の子が月曜日の朝友達に「ドラクエ」の進捗を話しているかのようでした。

好きなことをしていると、人はエネルギッシュで若く見える。

そんな聞きなれた言葉を実感するような大将の笑顔でお腹いっぱいになりそうになりますが、まずは美味しそうなお造りを頂きます。

マグロも、真鯛も、アオリイカも、熟成させるとこんな味になるのか・・・と一同唸るくらいに衝撃を受けました。

全く関係ないのですが、将棋と麻雀の共通点が一つありまして、それは「感想戦が楽しすぎる」ということ。

羽生竜王も、藤井七段も、みんな対局が終わると駒を戻して、対局相手とああだった、こうだったと盤面を前にしてその日の一局の感想を語りあいます。

麻雀も同じで、今日の対局のタラレバを肴に飲む酒は死ぬほど楽しいものです。

このあたり、競馬も同じですね。

ギャンブルの結果にタラレバはないのですが、そのタラレバを肴にして飲む酒は美味しいですね。

というよりも、そちらが本番なのかもしれません。

この日、訪れた私を含めた三人は感想戦が楽しみで酒席に来たという面があったのですが、このお造り盛り合わせから、もう「美味い」「やべえ」「おかわり」という単語しか出てこず、めずらしく感想戦は捗らない場となりました。

それくらい美味しかった。

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 たまらず日本酒にスイッチ。

山形のすっきり「出羽桜」。

わざわざフォトジェニックのために、一升瓶を席に持ってきて頂くホスピタリティに感服いたしました。

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珍味盛り合わせ。

左からホタルイカの炙り、カマンベールチーズの味噌漬け、ホヤの塩辛、カニみそ、ホヤの刺身、梅水晶。

もうできることならこの一皿一皿で、小一時間ずつ酒を舐めて夜を明かしたい。

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ホヤの刺身。

臭みがまったくなく、海の香りと塩気にうっとり。

同行した友人も、ホヤに対する概念が変わったと言っていました。

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ちょっと変化球?の牛すじ煮を。

丁寧に煮込まれた牛すじは、コクがありながらも重たくなく、箸が止まりません。

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干物炙りの中で「真サバ」をお願いしました。

この黄金色に輝く肉厚なサバ。

これだけでご飯と酒の両方を食べて飲みたい。

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牡蠣の天ぷら。

こんなに大きな牡蠣を天ぷらで頂くぜいたく。

噛むと中から牡蠣のエキスがあふれ出す瞬間は、三人とも目をぎゅっと閉じて「あぁ・・・」とため息をついていました。

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干物炙りをもう一品。穴子です。

山陰から仕入れたと大将は言ってましたが、びっくりするくらい肉厚。

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長野の辛口、「大信州」と合わせてみます。

・・・とカッコよく書いてみましたが、私は全然日本酒に詳しくありませんので、次に飲むなら?と大将に選んでもらいました。

何でもできないことや知らないことは、できる人知ってる人に頼むべきですね。

さて、〆のごはんは季節の炊き込みご飯をお願いしました。

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この美しいフォルム。

「お米を美味しく炊くには?」ということを突き詰めていった結果、この「羽釜型土鍋」に行きついたそうです。

それをまた楽しそうに語る大将がまたいい笑顔をされていて、それだけで酒が飲めそうです。

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この日は真鯛とれんこんの炊き込みご飯でした。

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もう、ここまでくると何も言うことなく三人でご飯をかきこんでいました。

日本に生まれてよかった。 

そんなことを感じる至福のひととき。

それにしても、余すことなく発酵と熟成の幸を堪能させて頂きました。

美味しかったです。

ごちそうさまでした。

さて、帰り道の電車の中、こんなお店が近くにある東京都民の友人が羨ましくて嫉妬を覚えた私は、発酵と熟成の幸と大将の笑顔にまた会いに来ようと思うのでした。